瀧本様プロフィール

キャリコンリンク合同会社 代表。国家資格キャリアコンサルタント。学校法人での専門学生の就職支援を経て退職後、ハローワークでの職業紹介、企業の採用支援、キャリアコンサルタント養成講座の講師など幅広い領域で実績を重ねる。著書に『オンライン就活は面接が9割』『キャリアコンサルタントで年収1000万』などがあり、大手転職メディアの記事監修や放送局の就活番組監修も多数。32年間で約6万人の面談に携わってきた。大阪出身、現在は東京を拠点に活動中。
月収1万5,000円の時代もあった——「来るもの拒まず」で経験を広げた32年

Zキャリアガイド編集部────まず、瀧本様がキャリア支援の世界に入った経緯を教えてください。
「もっと多くの人を支援したい」という思いで退職し、来るものすべてに全力で向き合い続けた結果が今につながっている
瀧本様────元々は学校法人で専門学生の就職支援や教壇に立つ仕事をしていました。ただ、当時は平成の不況のまっただ中で、特定の世代の支援だけではなく、もっと多くの方々を支援したいという思いが強くなり、退職して一般の就職・転職支援に回っていきました。
退職直後は、特定の世代しか経験がなかったため、中高年の方や女性の支援、障がい者支援など、経験のない領域に対応しきれず、十分な結果が出せない時期が続きました。一番厳しかった時は月収1万5,000円ということもありました。
そこから「来るもの拒まず、何でもやらせていただこう」という姿勢で、声がかかるものはすべて引き受けました。大阪を拠点に、さまざまなジャンルの支援を経験することで視野が広がり、技術力と対応力がついていきました。何より大切にしたのは、相談される方の満足度です。どんな依頼にも全力で向き合い続けた結果、次の依頼へとつながっていくようになり、現在の「行列ができるキャリアコンサルタント」と呼ばれる状態に至っています。
刑務所から出所された方と、72歳の求職者——印象に残る支援エピソード
Zキャリアガイド編集部────32年間で最も大変だった支援について教えてください。
求人を検索するだけでは見つからない道を、人とのつながりの中で切り開いていく必要があった
瀧本様────一番大変だったのは、受刑者の就労支援(社会復帰支援)です。ご自身の病気とも戦いながら「働きたい」という意志を持っていらっしゃった方で、履歴書の空白期間をどう整理するか、応募に至るまでの準備をどう進めるかが最大のテーマでした。求人を検索するだけでは見つからない道を、人とのつながりの中で切り開いていく必要がありました。
もう1つ印象に残っているのは、72歳の方の就職支援です。当時はまだ定年が60歳前後の時代で、来る日も来る日も毎日相談に来られ、半年間ずっとお仕事を探し続けました。半年後にようやく決まった時は、本当にほっとしました。6万人の中でもこうした方々との出会いは数少ないケースですが、それだけに深く記憶に残っています。
「仕事中心」から「暮らし方中心」へ——32年間で変わったキャリア観
Zキャリアガイド編集部────32年間で、求職者の方のキャリアに対する価値観はどう変わりましたか。
「暮らし方を起点にした働き方の設計」は、今の若い世代ならではだと感じる
瀧本様────かつては1つの企業でずっと働いていくのが当たり前でした。今は仕事を生活の中心ではなく、生活の一部として捉えている方が非常に多くなっています。テレワークや副業の解禁など、環境面も大きく変わりました。50%以上の会社が副業OKという現状は、10年前には考えられなかったことです。
最近の若い方に特に感じるのは、パラレルにキャリアを築く方が増えていることです。昼は会社員として働きながら、夜は新聞配達をしている方がいました。「生活に困っているのか」とおっしゃる方もいるかもしれませんが、まったく違います。本人はバイクが好きで、配達というタイムトライアル的な仕事にやりがいを感じている。配達で得た収入は趣味の交際費に充て、本業の給料は将来のために貯めている。こうした「暮らし方を起点にした働き方の設計」は、今の若い世代ならではだと感じます。
参照:「約7割の企業が副業・兼業を「認めている」「認める予定」――経団連の「副業・兼業に関するアンケート調査結果」/独立行政法人 労働政策研究・研修機構」
AI時代に問われるのは「大丈夫です」をどう表現するか——人間にしか伝えられない温度感
Zキャリアガイド編集部────AI時代において、就職・転職活動で最も身につけるべき視点やスキルは何でしょうか。
AIは正しいことを教えてくれるが、「どう表現したら心が動くか」まではまだできない

瀧本様────今の学生の約7割が就職活動にAIを活用しているというデータがあります。書類作成においては、何が正しいかはAIがすべて出せてしまう時代です。
ただ、たとえば「大丈夫です」という一言をとっても、「行けます」という意味にも、体調が大丈夫という意味にも、色々な角度で受け取れます。こうした人間でしか分からないニュアンスを、自分でどう表現するかが今一番大事になってきています。
上手にAIを活用している方は、AIから出てきたものをそのまま使うのではなく、自分で検討した上で「これをどう伝えたら相手に響くか」を考えている。一方で、出てきたものをそのまま貼り付けてしまう方もいて、講師仲間でも「この日本語は普段使わないよね」と気づくことがあります。
AIは正しいことを教えてくれますが、「どう表現したら心が動くか」まではまだできません。だからこそ、私たちのような人間と一緒に考える価値があると思っています。
「嫌だ」という気持ちは大事——退職代行と安易な転職の境界線
Zキャリアガイド編集部────退職代行サービスが話題になっていますが、安易な転職との境界線はどこにあるのでしょうか。
「つまらない」だけで辞めるのはもったいない——ただし、企業側も変わる必要がある
瀧本様────「嫌だ」という気持ち自体はとても大事です。人間関係がどうしようもない状況に追い込まれている場合は、辞めることも1つの選択です。
ただ、「つまらない」というだけで辞めてしまうのはもったいないと感じます。組織の中には、本人には見えていないけれど、実は次のステップとして予定されていることもあります。それを確認しないまま自分の判断で辞めてしまい、同じことを繰り返してしまうケースは少なくありません。
一方で、企業側も変わる必要があります。新卒一括採用の仕組みの中で能力差がある人材に一律の研修を課している現状に対して、若い世代から疑問の声が上がっているのも事実です。どちらかが一方的に悪いのではなく、双方の歩み寄りがもっと必要だと思います。
転職の3大悩みへの向き合い方——「休みが少ない」「給料が安い」「人間関係が嫌」
Zキャリアガイド編集部────転職の悩みとして多い「休みが少ない」「給料が安い」「人間関係が嫌」に、それぞれどう対処すればよいでしょうか。
「何と比べて安いのか」を整理し、市場価値を上げるための言語化をプロと一緒に進める

瀧本様────「休みが少ない」については、ライフキャリアの変化、例えばお子さんの誕生やご家族の介護などによって休みの重要度は変わっていきます。制度を整えようとしている企業は増えていますが、まだ追いついていない会社もあります。待つか、環境を変えるか、という判断になります。
「給料が安い」については、まず「何と比べて安いのか」を整理する必要があります。そして、市場価値を上げるためには、自分がやってきたことをどう言語化して伝えるかが鍵です。AIは正しいことは教えてくれますが、どう表現すれば伝わるか、どう言えば心が動くかまではできません。だからこそ、我々のようなプロと一緒に言語化していくことが、市場価値を上げる一番早い方法だと思います。
「人間関係が嫌」については、合わない人がいるのは仕方のないことです。ただ、将来マネジメントに関わることを考えるなら、合わない人と一緒にモチベーションを高め合いながら取り組めるようになることは、自分の価値を大きく高めます。どうしても辛い時は、我々のような存在に愚痴を聞かせてください。気持ちの部分を少し軽くするだけで、「また明日行こうかな」と思える瞬間があります。
失敗は「違う選択をしただけ」——落ち込んだ時は小さく試して、違う結果を体験する
Zキャリアガイド編集部────失敗を恐れて動けない方へのアドバイスをお願いします。
大きな決断の前に身近なところで違う選択を試すことが、失敗への恐怖を和らげてくれる
瀧本様────失敗と捉えるか、「たまたまこちらの選択をしたからこういう結果になった」と捉えるかで、その後の成長は大きく変わります。違う選択をしていたらどうなっていたんだろうと考える癖をつけていただくと、落ち込みから立ち直りやすくなります。
慎重な方は、小さく試してみるのも1つの方法です。大きな決断をする前に、身近なところで違う選択を試して、違う結果を体験してみる。そうした積み重ねが、失敗への恐怖を和らげてくれます。
キャリアを見直したい方へ伝えたいメッセージ
Zキャリアガイド編集部────最後に、キャリアを見直したいと考えている方へメッセージをお願いします。
「自分はどう暮らしたいか」を起点に、今を考えてほしい

瀧本様────目の前のことで精一杯になってしまう気持ちはよく分かります。ただ、人生100年時代と言われる今、少し先のことを考えて「自分はどう暮らしたいか」を起点にしていただくと、仕事の選び方も、働き方も、人との関わり方も変わってくると思います。
自分をわがままに生きていくというのは、とても大事なことです。納得する毎日、満足のいく毎日を暮らすために、仕事をどう位置づけるかを考えてみてください。おぼろげでも構いません、抽象的でも構いません。「自分はどうありたいか」を持っているだけで、今の過ごし方は変わります。
迷っている時間ももちろん大切ですが、迷い続けるとモヤモヤが増えてしまって、心身にもよくありません。そんな時は、ぜひ一度お話しにきてください。
まとめ
32年間・6万人の支援実績を持つ瀧本様が語る、AI時代のキャリアの築き方。キャリアの見直しや転職の悩みを相談したい方は、キャリコンリンク合同会社の公式サイトよりお問い合わせください。
取材日:2026年07月09日
取材/執筆担当者 株式会社ROXX Zキャリアマーケティング事業部 平井祐樹