介護士とは?介護福祉士との違いを解説
介護士は、高齢者や障がいがある方々の日常生活を支援する専門職です。食事や入浴などの身体的な介助から、精神的なサポートまで、その役割は多岐にわたります。この記事では、介護士の具体的な仕事内容や介護福祉士との違いについて詳しく解説します。
介護士は介護をする人の総称で無資格からでも始められる※
一般的に「介護士」とは、介護施設や在宅で介護業務に従事する職員全般を指す言葉です。
利用者の身体に直接触れて支援する「身体介護」は、特別養護老人ホームなどの施設であれば、有資格者の指導を受けながら無資格者が担当する場合もあります。一方で、自宅を訪問してサービスを提供する「訪問介護」では、介護保険制度上、無資格の職員は訪問介護員として従事できず、「介護職員初任者研修」以上の資格を取得していることが前提となります。無資格の場合は、食事の配膳や清掃、レクリエーションの補助といった、身体に触れないサポート業務からスタートすることが多いです。
※介護の仕事は、特別な資格がなくてもスタートできますが、2024年4月以降は無資格のまま直接介護に携わる場合、入職から1年以内に「認知症介護基礎研修」を修了することが義務付けられています。
介護福祉士は国家資格でより専門的な介護やスタッフへの指導ができる
一方で「介護福祉士」は、社会福祉士及び介護福祉士法に基づく国家資格です。介護に関する高度な知識と技術を持つ専門家であり、介護士の上位資格に位置づけられます。
介護福祉士は、直接的な介護サービスを提供するだけでなく、他の介護スタッフへの指導や助言、サービスの質の向上に向けたリーダー的な役割も担います。資格手当がつくなど給与面でも優遇されることが多く、キャリアアップを目指す上での重要な目標となります。
介護士の代表的な仕事8選
介護士の仕事は、利用者の生活に密着した多岐にわたるサポートを行います。ここでは、代表的な8つの仕事内容を具体的に見ていきましょう。

食事の介助
自力で食事を摂ることが難しい利用者のために、食事の準備、配膳、食事中のサポートを行います。誤嚥(ごえん)を防ぐために姿勢を整えたり、食べやすいように刻んだりする工夫も重要です。
入浴の介助
安全に入浴できるよう、衣服の着脱、洗身、洗髪などを手伝います。利用者の体調を確認しながら、転倒などの事故が起きないよう細心の注意を払う、身体的な負担も大きい業務です。
排泄の介助
トイレへの誘導、おむつ交換などを行います。利用者の尊厳に配慮し、羞恥心を感じさせないような声かけや手際の良さが求められる、デリケートな仕事です。
移動の介助
ベッドから車椅子への移乗、歩行の付き添いなど、利用者が安全に移動するためのサポートです。利用者の状態に合わせた適切な介助技術が必要で、自身の腰などを痛めないための知識も重要です。
利用者が自分で行うのが難しい家事全般
訪問介護では、掃除、洗濯、調理、買い物代行といった日常生活の援助も行います。施設では、利用者の居室の清掃や身の回りの整理整頓などが主な業務となります。
レクリエーションの企画
利用者の心身機能の維持・向上や、他者との交流を促すために、体操やゲーム、季節のイベントなどを企画・実行します。利用者に楽しんでもらうためのアイデアや工夫が求められます。
利用者の話し相手
日常会話を通して利用者の孤独感を和らげ、精神的な支えとなることも大切な仕事です。傾聴の姿勢でじっくりと話を聞き、信頼関係を築くことで、利用者の小さな変化にも気づきやすくなります。
介護記録の作成
提供した介護サービスの内容や利用者の体調、様子の変化などを記録します。この記録は、スタッフ間の情報共有や、適切なケアプランを作成するための重要な資料となります。
介護士が働く施設と施設ごとの仕事内容の違い
介護士が活躍する場は、特別養護老人ホームやデイサービス、病院など多岐にわたります。施設の種類によって、入居者の要介護度や提供するサービスが異なるため、介護士の仕事内容や働き方も大きく変わってきます。ここでは、代表的な施設とその特徴、仕事内容の違いを解説します。自分に合った働き方を見つけるためにも、それぞれの施設の違いを理解しておくことが重要です。
特別養護老人ホーム(特養)
特養は、原則として要介護3以上の高齢者が入居する公的な施設で、終身にわたる生活の場となります。そのため、介護士の仕事は食事、入浴、排泄といった身体介護が中心となり、24時間体制でのケアが求められます。夜勤も必須となる場合が多いです。
利用者と長期的に関わるため、深い信頼関係を築きやすいのが特徴です。また、看取りケアを行うこともあり、利用者の人生の最期に寄り添うという重要な役割も担います。医療的なケアは比較的少なく、日常生活の支援に重点が置かれています。
介護老人保健施設
介護老人保健施設(老健)は、病状が安定した高齢者が在宅復帰を目指すためのリハビリテーションを中心とした施設です。入居期間は原則3~6ヶ月と短めです。介護士は、理学療法士や作業療法士などの専門職と連携しながら、利用者のリハビリをサポートし、日常生活動作(ADL)の向上を目指します。
特養に比べて医療的なケアの必要性が高く、看護師との連携もより密接になります。利用者の入れ替わりが早いため、多くの方と関わりながら支援の経験を積むことができます。
有料老人ホーム
有料老人ホームは民間企業が運営しており、「介護付」「住宅型」「健康型」の3種類があります。「介護付」では、施設スタッフが24時間体制で介護サービスを提供します。「住宅型」は自立した生活が基本で、必要に応じて外部の介護サービスを利用します。
施設によって設備やサービス内容が大きく異なり、高級志向の施設では接遇マナーが重視されることもあります。仕事内容は施設のタイプによって様々ですが、利用者一人ひとりのニーズに合わせた、質の高いサービス提供が求められる傾向にあります。
グループホーム
グループホームは、認知症の高齢者が5~9人の少人数単位で共同生活を送る施設です。家庭的な雰囲気の中で、利用者が持つ能力を活かしながら自立した生活を送れるよう支援することが目的です。介護士は、食事の準備や掃除などを利用者と一緒に行い、日常生活を共にするパートナーのような役割を担います。
一人ひとりとじっくり向き合えるため、認知症ケアの専門知識や対応スキルを深く学ぶことができます。夜勤もありますが、比較的小規模な施設が多いのが特徴です。
デイサービス
デイサービス(通所介護)は、利用者が日帰りで施設に通い、食事や入浴、レクリエーションなどのサービスを受ける施設です。主な目的は、利用者の心身機能の維持向上と、家族の介護負担の軽減です。介護士の仕事は、利用者の送迎、健康チェック、入浴や食事の介助、レクリエーションの実施が中心となります。
夜勤はなく、基本的に日中のみの勤務となるため、家庭と両立しやすい働き方が可能です。多くの利用者とコミュニケーションを取る機会が多く、明るく活気のある職場が多い傾向にあります。
訪問介護事業所※
訪問介護は、利用者の自宅を訪問し、身体介護(食事、入浴、排泄など)や生活援助(調理、掃除、買い物など)を行います。基本的に一人で利用者の対応にあたるため、高い判断力と応用力が求められます。1日に複数の家庭を訪問するため、移動時間が勤務時間に含まれることも特徴です。
利用者やその家族と密接に関わるため、コミュニケーション能力が非常に重要になります。自分のペースで働きやすく、登録ヘルパーとして短時間勤務など、柔軟な働き方が選びやすいのも魅力です。
※訪問介護事業所で働くには「初任者研修」以上の資格が必要です
病院
病院では、介護士は「看護助手」や「ケアワーカー」として、入院患者の身の回りの世話を担当します。主な仕事は、食事や排泄、入浴の介助、ベッドメイキング、備品管理など、看護師の補助業務です。医療現場で働くため、看護師や医師など多職種との連携が不可欠です。
病気や怪我を抱える患者のケアを通じて、医療に関する知識や感染症対策などのスキルが身につきます。急性期病院か療養型病院かによって、患者の状態や求められるケアの内容が異なります。
【日勤編】介護士の1日の流れの例
- 出勤
- バイタルチェック・排泄の介助
- 入浴の介助
- 昼食の介助
- 休憩
- レクリエーション
- おやつの提供
- 排泄の介助・介護記録の作成
- 夜勤スタッフへ引き継ぎ
- 退勤
介護施設における日勤の仕事は、利用者が活動的に過ごす時間帯をサポートする重要な役割を担います。出勤後、まずは夜勤スタッフからの申し送りを受け、利用者の夜間の様子や体調変化を把握します。
その後、朝の排泄介助やバイタルチェックを行い、午前中は入浴介助がメイン業務となることが多いです。
昼食時には食事の介助を行い、午後はレクリエーションで利用者と共に楽しい時間を過ごします。
おやつの提供や午後の排泄介助を終えたら、介護記録を作成し、夜勤スタッフへ利用者の日中の様子を正確に引き継いで退勤となります。
【夜勤編】介護士の1日の流れの例
- 出勤
- 夕食の介助
- 就寝のサポート
- 見回り
- 起床準備
- 起床の介助
- 朝食の介助
- 日勤スタッフへ引き継ぎ
- 退勤
夜勤は、利用者が安心して眠れる環境を整え、夜間の安全を守る重要な仕事です。
出勤後、日勤スタッフから申し送りを受け、利用者の夕食の介助や食後の服薬サポートを行います。
その後、歯磨きや着替えを手伝うなど就寝の準備を進めます。
利用者が就寝した後は、定期的な見回り(巡視)を行い、呼吸や体調に変化がないかを確認したり、おむつ交換をしたりします。朝方が近づくと、起床の準備を始め、着替えや洗顔の介助を行います。
朝食の介助を終えたら、介護記録をまとめ、日勤スタッフに利用者の様子を引き継いで業務終了です。
介護士はきつい?目指すときに注意したいポイント
介護の仕事はやりがいが大きい一方で、「きつい」というイメージを持つ方も少なくありません。実際に、体力的な負担や精神的なストレス、不規則な勤務形態など、大変な面があることも事実です。しかし、これらの課題は事前の理解と対策によって、乗り越えることが可能です。
ここでは、介護士を目指す際に知っておきたい注意点と、その対策について具体的に解説していきます。自分に合った働き方を見つけるための参考にしてください。
体力的な負担が大きい
介護の仕事は、利用者の移乗介助や入浴介助など、身体を動かす業務が多く、体力的な負担は避けられません。特に腰への負担が大きく、腰痛に悩む介護士も少なくありません。負担を軽減するためには、ボディメカニクス(身体の仕組みを活かした介護技術)を学び、正しい姿勢で介助を行うことが重要です。
また、日頃からストレッチや適度な運動を心がけ、体力を維持することも大切になります。
日々いろいろな人と関わることで精神的な疲れを溜め込みやすい
介護士は、利用者やその家族、同僚など、日々多くの人と関わります。感謝される喜びがある一方で、時には厳しい言葉を受けたり、認知症の方とのコミュニケーションに悩んだりすることもあります。
ストレスを溜めないためには、仕事とプライベートのオンオフを切り替え、同僚や上司に相談できる環境を見つけることが大切です。
施設によっては夜勤があるため生活リズムが不規則になる
特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、24時間体制の施設では夜勤が必須となる場合が多いです。夜勤は手当がつくため給与は高くなりますが、生活リズムが不規則になり、体調管理が難しくなることもあります。
夜勤が難しい場合は、デイサービスや訪問介護事業所など、日中のみの勤務が可能な職場を選ぶと良いでしょう。自分のライフスタイルに合った働き方を選択することが、長く仕事を続けるための鍵となります。
資格がないと給与が上がらない可能性がある
介護業界は、資格の有無が給与に直結しやすい業界です。無資格でも始めることはできますが、昇給やキャリアアップを目指すには資格取得が不可欠です。
例えば、介護福祉士の資格を持つことで資格手当が支給され、給与が大幅にアップすることが一般的です。計画的に資格を取得し、専門性を高めていくことが重要です。
未経験から介護業界で目指せるステップアップ
介護業界は未経験からでもスタートでき、働きながらステップアップできる点が魅力です。資格を取得し、経験を積むことで、専門職として着実に成長できます。ここでは、未経験から始められる代表的なキャリアパスを紹介します。

介護職員初任者研修を受講して基礎を学ぶ
未経験から介護士を目指すなら、まず「介護職員初任者研修」の受講がおすすめです。これは介護の入門的な資格で、介護の基本的な知識や技術を学ぶことができます。この資格を取得することで、利用者の身体に直接触れる「身体介護」を行えるようになり、仕事の幅が広がります。
就職活動でも有利になるため、介護業界でキャリアをスタートさせる第一歩として最適な資格といえるでしょう。
介護福祉士実務者研修を修了し、サービス提供責任者を目指す
「介護福祉士実務者研修」は、初任者研修よりさらに専門的な知識と技術を学ぶための研修です。この研修を修了することは、訪問介護事業所で「サービス提供責任者(サ責)」として配置されるための事実上の必須条件となっています。
サービス提供責任者は、ケアマネジャーとの連携やヘルパーの指導など、コーディネート業務を担う重要な役職です。未経験から最短ルートでサ責などの役職を目指すのであれば、現場で経験を積みながらこの実務者研修を修了するルートが、最も現実的でスピード感のあるステップといえます。また、後述する国家資格「介護福祉士」の受験資格にもなっています。
実務経験を積んで介護福祉士の資格を取る
介護福祉士は、介護分野で唯一の国家資格です。この資格を取得するには、実務経験ルートの場合、「3年以上の実務経験」と「介護福祉士実務者研修の修了」が必要です。
資格を取得すると、介護の専門家として認められ、給与アップや役職への昇進など、キャリアの選択肢が大きく広がります。現場のリーダーや教育担当など、より責任のある立場で活躍することが期待されます。
ケアマネジャー(介護支援専門員)や施設長へステップアップ
介護福祉士として経験を積んだ先には、さらに上位のキャリアパスがあります。代表的なのが、利用者のケアプランを作成する「ケアマネジャー(介護支援専門員)」です。介護福祉士などの国家資格を取得し、その資格登録を行った「登録日以降」に、利用者への直接的な対人援助業務に通算5年以上(かつ従事日数900日以上)携わることで、ケアマネジャー試験の受験資格が得られます。
注意したいのは、国家資格を取る前に無資格や初任者研修だけで働いていた期間の実務年数は、この5年には一切含めることができないという点です。受験時期の見通しを立てる際は、資格登録日を起点に実務経験を数えるようにしてください。
さらに経験とマネジメント能力を磨けば、介護施設の運営全般を担う「施設長」を目指すことも可能です。現場での介護経験を活かし、より広い視点で介護業界に貢献できる道が開かれています。
介護業界以外で介護士のスキル・経験を活かして目指せる仕事
介護の仕事で培ったスキルや経験は、介護業界以外でも大いに役立ちます。特に、高いコミュニケーション能力や傾聴力、相手のニーズを汲み取る力は、多くの職種で求められるポータブルスキルです。もし将来的に他の業界へ転職を考える場合でも、介護士としての経験は無駄にはなりません。ここでは、介護士の経験を活かせる代表的な仕事をいくつか紹介します。

営業職
営業職には、顧客の課題やニーズを正確にヒアリングし、適切な提案を行う能力が不可欠です。介護の仕事で培った傾聴力や、利用者一人ひとりの状況に合わせて対応してきた経験は、顧客との信頼関係構築に直結します。
特に、高齢者向けのサービスや商品を扱う企業の営業職であれば、介護現場の知識を直接活かすことができ、即戦力として活躍できる可能性が高いでしょう。
接客・販売職
接客・販売職は、お客様とのコミュニケーションが基本となる仕事です。介護士として様々な利用者と接してきた経験は、多様なお客様への対応力に繋がります。相手の表情や言葉から気持ちを察し、丁寧に対応するスキルは、顧客満足度を高める上で大きな強みとなります。
また、体力や忍耐力も求められる点が介護の仕事と共通しており、スムーズに業務に馴染めるでしょう。
事務職
事務職では、正確なデータ入力や書類作成、電話対応などが主な業務です。介護士は毎日、介護記録を作成しており、利用者の情報を正確かつ簡潔にまとめるスキルが身についています。この記録作成能力は、事務職における報告書作成やデータ管理に活かせます。
また、他部署との連携や電話応対など、コミュニケーション能力が求められる場面も多く、介護経験が役立ちます。
タクシードライバー
近年、高齢者の移動手段としてタクシーの需要が高まっています。特に、病院への送迎などでは、身体が不自由な方の乗り降りをサポートする場面も少なくありません。介護士として身につけた移乗介助の技術や、高齢者とのコミュニケーションスキルは、介護タクシーやユニバーサルデザインタクシーのドライバーとして大きな強みになります。
利用者に安心感を与えられる存在として、高く評価されるでしょう。
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※この記事は2026年4月時点の情報に基づき執筆されています。