異動を希望しない理由の伝え方｜角が立たない断り方の例文付き

異動を希望しない理由を伝える際の例文と基本姿勢

会社から異動の話が出たとき、どう伝えれば自分の気持ちを理解してもらえるのでしょうか。ここでは、異動を希望しない理由を伝える際の基本的な考え方について、以下の項目で解説します。

各項目について、詳しく見ていきましょう。

会社の状況を理解する姿勢を示す

まず大切なのは、会社側の事情を考える姿勢を見せることです。「異動は嫌です」と自分の気持ちだけを押し通そうとすると、ただのわがままに見えてしまうかもしれません。会社は、事業計画や人員配置など、全体のバランスを考えて異動を決定します。

その決定には何か理由があるはずです。「会社が自分のキャリアを期待してくれているからこその話かもしれない」と一度受け止めてみましょう。その上で、「会社の考えも理解できますが、私としては…」と話を切り出すことで、一方的な拒否ではなく、話し合いの姿勢があることを示せます。

現状への満足と貢献意欲を伝える

異動したくない理由を伝えるときは、今の仕事への前向きな気持ちをアピールするのがポイントです。「今の仕事が好きで、もっとここで頑張りたい」という伝え方をすれば、仕事に対するやる気がないわけではないことが伝わります。

例えば、「今の部署の〇〇という業務にとてもやりがいを感じており、もっとスキルを磨いてチームに貢献したいです」といった具体的な言葉で伝えましょう。今の職場への満足度や、今後もここで頑張りたいという貢献意欲を示すことで、上司もあなたの気持ちを理解しやすくなります。

前向きで正直な理由を準備する

異動を断る理由は、嘘偽りのない正直なもので、かつ前向きな内容であることが理想です。例えば、「新しい環境が不安だから」というネガティブな理由だけではなく、「今の職場で〇〇という目標を達成したいから」というポジティブな理由に言い換えてみましょう。

「人間関係が嫌だから」といった理由も、そのまま伝えると不満を言っているだけのように聞こえてしまいます。そうではなく、「今のチームは連携がうまくいっており、この環境でさらに成果を出していきたいです」のように、ポジティブな側面に焦点を当てて伝える工夫が大切です。

感謝の気持ちを伝えることを忘れない

最後に、自分に期待してくれていることへの感謝を必ず伝えましょう。異動の打診は、会社があなたの能力や将来性を評価している証拠でもあります。「期待して声をかけていただいたこと、本当にありがとうございます」という一言があるだけで、相手が受ける印象は大きく変わります。

感謝の気持ちを示した上で、異動を希望しない理由を丁寧に説明すれば、上司もあなたの意見を真剣に聞いてくれるでしょう。円満なコミュニケーションを心がけることが、自分の希望を叶えるための第一歩です。

異動したくないと感じるポジティブな理由の例

異動したくないという気持ちは、決してネガティブなものではありません。ここでは、会社にも納得してもらいやすい、前向きな理由の例を以下の項目でご紹介します。

各項目について、詳しく解説していきます。

現在の仕事で専門性を高めたい

今の仕事で専門的なスキルを身につけたいという理由は、非常に説得力があります。特定の分野でプロフェッショナルを目指すことは、個人の成長だけでなく、会社の利益にもつながるからです。

例えば、「今担当している〇〇の業務について、もっと知識を深めて第一人者になりたいです。そのスキルを活かして、将来的には会社に大きく貢献できると考えています」と伝えれば、向上心のアピールになります。目標が明確であればあるほど、上司もあなたのキャリアプランを応援してくれる可能性が高まります。

今のチームで目標を達成したい

「このチームで進行中のプロジェクトを成功させたい」という理由も、責任感の強さを示す有効な伝え方です。特に、チーム一丸となって取り組んでいる大きな目標がある場合、その達成を見届けたいという気持ちは自然なものでしょう。

「現在、チームで〇〇という目標に向かって進んでいます。私もその一員として、最後まで責任を持ってやり遂げたいです」と伝えることで、チームへの愛着や貢献意欲を伝えられます。自分の役割の重要性を具体的に説明できると、さらに説得力が増すでしょう。

顧客や取引先との関係を深めたい

営業職や接客業など、人との関わりが重要な仕事の場合、築き上げてきた顧客との関係性を理由にすることもできます。「〇〇社の担当者とようやく良好な関係が築け、これからさらに大きな取引につながりそうです」といった具体的なエピソードを交えて話すと、説得力が増します。

後任への引き継ぎが難しい状況や、自分だからこそ維持できている関係性があることを伝えられれば、会社側もその重要性を理解してくれるでしょう。これもまた、個人の都合だけでなく、会社の利益を考えているという姿勢を示すことにつながります。

ワークライフバランスが保てている

「今の働き方のおかげで、仕事とプライベートの両立ができています」という理由も、正直に伝えてよい内容です。特に、結婚や育児、介護といった家庭の事情がある場合、通勤時間や勤務体系が変わることは大きな問題になります。

ただし、伝え方には注意が必要です。「異動すると通勤が大変になるから嫌だ」とストレートに言うのではなく、「現在の勤務地だからこそ、家族のサポートと仕事を両立できており、仕事にも集中できています」のように、現状が良いパフォーマンスにつながっていることを強調しましょう。

異動したくない気持ちは「わがまま」なの？

「異動したくない」と伝えることに、罪悪感を感じる必要はありません。ここでは、その気持ちが「わがまま」ではない理由について、以下の項目で解説します。

各項目について、詳しく見ていきましょう。

正当な理由があればわがままではない

明確で前向きな理由があれば、それは「わがまま」にはなりません。例えば、「今の仕事でもっと成長したい」「このチームに貢献したい」といった理由は、仕事への意欲の表れです。自分の考えをしっかりと持ち、それを丁寧に伝えることは、社会人としてむしろ評価されるべき姿勢です。

大切なのは、感情的に「嫌だ」と言うのではなく、なぜそう思うのかを論理的に説明することです。自分の気持ちを整理し、相手に納得してもらえるような伝え方を意識すれば、建設的な話し合いができるでしょう。

自分のキャリアを考えるのは当然のこと

自分の将来や働き方を真剣に考えるのは、とても大切なことです。会社に言われるがままに働くのではなく、「自分はどんなスキルを身につけたいのか」「どんな働き方をしたいのか」を考えることは、主体的に仕事に取り組んでいる証拠です。

会社が示すキャリアパスが、必ずしも自分にとって最適とは限りません。自分のキャリアプランをしっかりと持った上で、「今回の異動は、自分の目指す方向とは少し違うかもしれません」と伝えることは、自分の人生に責任を持つ上で自然な行動と言えるでしょう。

会社にとってもミスマッチを防ぐ機会になる

実は、本人の意向を無視した異動は、会社にとってもデメリットになることがあります。やる気のない状態で新しい部署へ行っても、良いパフォーマンスは期待できません。最悪の場合、早期退職につながってしまう可能性もあります。

本人が正直な気持ちを伝えることで、会社は「この人は今の部署でこそ輝ける人材なんだな」と再認識することができます。それは、適材適所を実現し、社員と会社の双方にとって不幸なミスマッチを防ぐ良い機会になるのです。

【状況別】異動を希望しない理由の例文

ここでは、実際に上司に伝える場面を想定した、具体的な例文を状況別にご紹介します。以下の項目を参考にして、自分なりの言葉でアレンジしてみてください。

各項目について、詳しく解説していきます。

専門性を追求したいと伝える例文

今の仕事でプロを目指したいという熱意を伝える例文です。

「この度は、〇〇部への異動のお話をいただき、ありがとうございます。私の可能性を評価していただき、大変光栄に思います。ただ、現在担当しております〇〇の業務に強いやりがいを感じており、この分野での専門性をさらに高めていきたいという思いが強くあります。将来的には、この分野のプロとして会社に貢献したいと考えておりますので、可能であれば、引き続き現在の部署で経験を積ませていただくことは難しいでしょうか。」

今のチームへの貢献を理由にした例文

現在のチームでやり遂げたいことがあると伝える例文です。

「異動のお話をいただき、ありがとうございます。大変魅力的なお話ですが、現在、チームで進めている〇〇プロジェクトが非常に重要な局面を迎えております。私もその一員として、このプロジェクトを最後までやり遂げ、チームの目標達成に貢献したいという気持ちが強くあります。このチームの一員として、今の役割を全うさせていただけないでしょうか。ご検討いただけますと幸いです。」

家庭の事情やライフプランを伝える例文

プライベートな事情を正直に伝える場合の例文です。

「お話、ありがとうございます。大変申し上げにくいのですが、現在、家族の介護（や子育てなど）の事情がありまして、現在の勤務地・勤務時間だからこそ、仕事との両立ができております。異動となりますと、現在のバランスを保つことが難しくなってしまう懸念がございます。会社の状況も理解しておりますが、今回は見送らせていただくことは可能でしょうか。」

体調面を考慮してほしいと伝える例文

体調を理由にする場合の丁寧な伝え方の例文です。

「異動をご提案いただき、ありがとうございます。大変恐縮なのですが、現在、持病の治療のため定期的な通院が必要な状況です。現在の勤務地ですと、仕事に支障なく通院を続けられるのですが、異動となると少し難しいかもしれません。体調管理を万全にし、現在の業務で貢献を続けていきたいと考えております。ご理解いただけますと幸いです。」

自己申告書で異動希望なしと書く際の例文

会社によっては、年に一度「自己申告書」などでキャリアの希望を提出する機会があります。ここでは、自己申告書で異動を希望しない旨を記載する際の例文を見ていきましょう。

各項目について、詳しく解説していきます。

現職への貢献意欲をアピールする例文

今の仕事でこれからも頑張りたいという気持ちを具体的に書くことがポイントです。

「現在の〇〇部での業務に、大きなやりがいを感じています。特に、〇〇という業務を通じて、顧客との信頼関係を築くことに喜びを感じております。今後も、現在の部署で経験を積み、知識とスキルを深めることで、チームおよび会社の業績にさらに貢献していきたいと考えております。そのため、現時点では異動を希望しておりません。」

将来のキャリアプランと結びつける例文

自分の将来の目標と現在の仕事を結びつけて説明する書き方です。

「私のキャリアプランとしましては、〇〇分野のスペシャリストになることを目標としております。現在の部署では、その目標達成に必要な実践的なスキルを日々学ばせていただいており、大変充実しております。このまま経験を重ね、将来的には〇〇の資格取得にも挑戦したいと考えております。つきましては、引き続き現在の部署での勤務を希望いたします。」

ポジティブな表現で締めくくる例文

ただ「希望しない」と書くのではなく、前向きな言葉で文章を締めくくることが大切です。

「現部署での業務を通じて、日々成長を実感しております。この環境でさらに経験を積み、スキルアップしていくことが、会社への貢献に繋がる最善の道だと考えております。今後も変わらぬ意欲で業務に邁進してまいりますので、引き続き現部署での勤務を希望いたします。今後ともご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。」

避けるべき！異動を断るときのNGな伝え方

自分の希望を伝えることは大切ですが、伝え方を間違えると人間関係が悪化してしまうこともあります。ここでは、異動を断る際に絶対に避けるべきNGな伝え方を紹介します。

ただ「嫌だ」と感情的に拒否する

理由も説明せずに「嫌です」「無理です」とだけ言うのは、最も避けるべき対応です。これでは、ただの感情的な反発と捉えられてしまい、社会人としての未熟さを露呈してしまいます。上司も、なぜ嫌なのかが分からなければ、対処のしようがありません。

必ず「なぜなら〇〇だからです」と、冷静に理由を説明する準備をしておきましょう。感情的にならず、落ち着いて話し合う姿勢が、円満な解決への道を開きます。

会社や上司への不満を口にする

「どうせ私のことなんて分かってくれない」「この会社はいつもそうだ」といった、会社や上司への不満を口にするのもNGです。異動の打診をきっかけに日頃の不満をぶつけてしまうと、話がこじれるだけです。

たとえ不満があったとしても、それは別の機会に相談すべき問題です。異動を断るという目的から話が逸れてしまい、ただの「文句が多い人」というレッテルを貼られてしまう可能性があります。あくまで、前向きな理由を伝えることに集中しましょう。

嘘の理由を用意する

その場しのぎで、もっともらしい嘘の理由をでっちあげるのは絶対にやめましょう。例えば、「親の介護が…」などと嘘をついてしまうと、後々必ずつじつまが合わなくなります。嘘がバレたとき、あなたの信用は一気に失われてしまいます。

一度失った信用を取り戻すのは、非常に困難です。たとえ言いにくい理由であったとしても、正直に伝えるか、伝えられる範囲でポジティブな理由に変換する努力をしましょう。誠実な態度は、必ず相手に伝わります。

異動先の部署やメンバーを批判する

「あの部署は雰囲気が悪いと聞いている」「〇〇さんがいる部署では働きたくない」など、異動先の部署やそこにいる人たちを批判するのも絶対にNGです。これは、非常に失礼な行為であり、人間性を疑われてしまいます。

会社の一員として、他の部署や同僚を尊重する姿勢は基本中の基本です。自分の希望を伝えるために、他者を貶めるような発言は控えましょう。あくまで、自分のキャリアプランや現状の仕事への思いを軸に話を進めるべきです。

異動の内示が出た場合のスマートな断り方とは？

実際に上司から「異動してほしい」と伝えられたら、どう対応すればよいでしょうか。ここでは、角を立てずに断るためのスマートな対応方法について解説します。

まずは内示への感謝を表明する

まず、驚きや戸惑いを見せる前に、感謝の言葉を伝えることが大切です。「お話をいただき、ありがとうございます。評価していただき光栄です」と、まずは相手の提案を受け止める姿勢を見せましょう。

この一言で、場の空気が和らぎ、冷静な話し合いのスタートを切ることができます。いきなり「無理です」と拒絶するのではなく、社会人としてのマナーを示すことが、円滑なコミュニケーションの第一歩です。

即答せずに考える時間をもらう

その場ですぐに結論を出す必要はありません。「ありがとうございます。少し考えさせていただくお時間をいただけないでしょうか」と伝え、一度持ち帰りましょう。焦って返事をすると、後で後悔する可能性があります。

時間をもらうことで、自分の気持ちを冷静に整理し、どう伝えるべきかをじっくり考えることができます。また、会社側にも「真剣に考えてくれているんだな」という印象を与えることができます。

希望しない理由を具体的に説明する

考える時間をもらった後、改めて面談の場を設けてもらい、自分の考えを伝えます。この時、これまで準備してきた「なぜ異動を希望しないのか」という前向きな理由を、具体的に、そして丁寧に説明しましょう。

「先日の件、考えさせていただきました。改めて、お話をいただけたことに感謝いたします。その上で、私の考えをお伝えさせてください」と切り出し、自分のキャリアプランや今の仕事への思いを誠実に話すことが重要です。

代替案や条件の交渉をしてみる

どうしても会社の決定が覆らない場合でも、諦めずに代替案や条件を交渉してみるという手もあります。例えば、「今回の異動がどうしても必要ということであれば、〇〇という条件を考慮していただくことは可能でしょうか」といった形です。

あるいは、「もし1年後であれば、プロジェクトも落ち着くので前向きに検討できます」のように、時期に関する交渉をしてみるのも一つの方法です。すべてが希望通りにならなくても、少しでも働きやすい環境になるよう、最後まで話し合う姿勢を見せることが大切です。

どうしても異動ならキャリアを見つめ直す機会

もし、自分の希望が通らず、異動が決定してしまったらどうすればよいでしょうか。落ち込むだけでなく、それを自分のキャリアを見つめ直すきっかけと捉えることもできます。

各項目について、詳しく見ていきましょう。

異動から得られるメリットを考える

希望しない異動であっても、必ず何か得られるものがあるはずです。新しい部署で働くことで、これまで知らなかった知識やスキルが身につくかもしれません。また、新しい人脈が広がることで、将来のキャリアにプラスに働く可能性もあります。

「この機会に新しいことに挑戦してみよう」「自分のスキルの幅を広げるチャンスだ」と、無理やりにでもポジティブな側面を探してみましょう。気持ちを切り替えることで、新しい環境でのスタートが少し楽になるかもしれません。

新しい環境を成長のチャンスと捉える

慣れた環境を離れるのは不安ですが、新しい環境は自分を大きく成長させてくれるチャンスでもあります。これまでとは違う仕事内容や人間関係に触れることで、新しい自分の得意なことや、やりがいを発見できるかもしれません。

コンフォートゾーン（快適な領域）から一歩踏み出すことは、勇気がいることです。ですが、その一歩が、自分でも気づかなかった可能性を引き出してくれるきっかけになることも少なくありません。

自分のキャリアプランを第一に考える

今回の異動をきっかけに、改めて「自分は将来どうなりたいのか」というキャリアプランを真剣に考えてみましょう。今の会社で働き続けることが、本当に自分の目標につながるのか。それとも、別の道を探すべきなのか。

会社の決定が、必ずしも自分の幸せと一致するとは限りません。自分の人生の主役は、自分自身です。この機会に、会社の都合だけでなく、自分のキャリアを第一に考えて行動する覚悟を持つことも大切です。

転職のプロにキャリア相談をしてみる

どうしても会社の方針と自分のキャリアプランが合わないと感じたら、無理に働き続ける必要はありません。自分の希望や適性に合った環境を探すのも、前向きな選択肢の一つです。ですが、いざ転職となると、何から始めればいいか分からない人も多いでしょう。

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