Zキャリア
会員登録(無料) ログイン

NPO法人あわの風 代表 加藤峰生氏にインタビュー「ひきこもり」支援にかける思いをお話いただきました

NPO法人あわの風 代表 加藤峰生氏にインタビュー「ひきこもり」支援にかける思いをお話いただきました
公開 2026/05/12

ひきこもりの支援をされている「NPO法人あわの風」の代表 加藤峰生様にインタビューを実施しました。ひきこもりで悩む家族へ、回復の鍵となる支援や「地域づくり」にかける想いを伺いました。

合わせて読みたい

「NPO法人 あわの風」について

千葉県館山市を拠点に活動するNPO法人「あわの風」。KHJ全国ひきこもり家族会連合会の南房総支部として、ひきこもりをはじめとする様々な生きづらさを抱える当事者やそのご家族を支援しています。主な活動は、個別の相談支援や家族会にとどまらず、誰もが気軽に集えるオープンスペースや子ども食堂、私設図書館「おおぞら文庫」の運営など多岐にわたります。地域に開かれた「居場所」を提供することで、孤独や孤立を感じる人々が社会との繋がりを取り戻す手助けをしています。今回は、同法人の代表を務める加藤峰生様に、活動に至った経緯や支援にかける想い、そして今後のビジョンについて詳しくお話を伺いました。

活動は2021年から取り組んでいる

Zキャリアガイド編集部────まず、ひきこもり支援に特化した「あわの風」を立ち上げられた背景について、詳しくお聞かせいただけますか。

ひきこもり支援に特化したNPO法人を作るまで

もともと私は精神障がいを持つ方の支援に長く関わっていました。しかし、2019年に”ひきこもり当事者”が関わる社会的な事件が立て続けに起こったのです。これらの事件は、センセーショナルに報じられ、「ひきこもり」というレッテルを貼ることで、まるでひきこもりの人全体が事件を起こしそうであるかのように情報が広まりました。その結果、全国の親御さんたちが「うちの子も事件を起こすのではないか」と不安に駆られ、私たちの元にも相談が増加したのです。精神障がいとはまた違う、専門的な支援の受け皿が必要だと痛感し、独立してひきこもり支援に特化したNPO法人「あわの風」を立ち上げることを決意しました。それが2021年のことでした。

主な活動は「ひきこもり相談」としつつも、多面的な連携を行っている

Zキャリアガイド編集部────設立の目的である「ひきこもり相談支援」が活動の柱とのことですが、実際に活動を始められて見えてきた課題や、そこから生まれた新たな取り組みについて教えてください。

活動の柱は、可視化されにくい悩みに寄り添う相談支援

やはり設立の目的そのものである「ひきこもり相談支援」が一番大きな活動の柱です。ただ、始めてみて改めて感じたのは、ひきこもり状態にある方々は決して可視化されているわけではない、ということです。ご本人やご家族が声を上げない限り、誰にもその苦しみは分かりません。不登校の延長にひきこもりがあり、その先に「8050問題」が待ち受けているのではないか…と、多くのご家族が将来への不安を抱えています。

行政を巻き込み、地域全体で支えるネットワークを構築

そこで私たちは、個別の相談支援だけでなく、行政や地域の社会福祉協議会などと連携した「ひきこもり支援協議会」の運営にも力を入れています。これは私たちが声を上げて行政を巻き込む形で実現したもので、地域の民生委員さんや様々な支援機関が集まり、個別のケース検討を行う場です。 「このケースにはどの機関が関われるか」といった意見交換をしながら、地域全体で支えるネットワークを構築しています。

活動のビジョンは「誰もが気軽に集える地域コミュニティづくり」

Zキャリアガイド編集部────個別の相談支援だけでなく、より広い視野で活動されているのですね。その活動全体に共通するビジョン、つまり「あわの風」が目指す社会の姿とはどのようなものでしょうか。

つながりが希薄な現代こそ、人々が自然と交流できる環境を作りたい

「ビジョン」というほど立派なものではないかもしれませんが、私たちが目指しているのは、「誰もが気軽に集い、交流できる居場所」をつくることです。それを言い換えれば「地域づくり」そのものだと考えています。悩みというのは本当に人それぞれで、「ひきこもり」という一つのカテゴリーでくくれるものではありません。だからこそ、家族会や、子どもから大人まで集える「おとなこども食堂」や「誰でも本を読める私設図書館」といった、人々が自然と交流できる環境を整えています。現代は地域コミュニティが形成されづらくなり、地域の人々同士の絆が希薄になっていると言われます。だからこそ、こうした温かいつながりを求められる時代なのだと感じています。

ローカルな環境で活動することの意義と課題

Zキャリアガイド編集部────千葉県館山市というローカルな環境で活動される中で、都市部とは違う特有の意義や課題を感じることはありますか。

人間関係の近さがもたらす「助けて」と言えない現実

地方、いわゆるローカルな環境には特有の課題があります。一つは、近所付き合いなど人間関係が近いがゆえの「声の上げづらさ」です。周囲の目を気にして、「助けて」と言えない方が少なくありません。実際に、館山市に住んでいらっしゃるご家族の方が、わざわざ遠くの千葉市の家族会に参加されているというケースもあります。地元では相談しづらい、という気持ちがあるのでしょう。

行政支援の継続性を、NPOの力で補う

もう一つの課題は、行政との関わり方です。行政の担当者は数年で異動してしまうため、どうしても支援の継続性が途切れがちになります。だからこそ、私たちのような民間NPOが地域にどっしりと根を張り、支援を継続していくことが非常に重要だと考えています。ときには行政に対して意識啓発を促していくことも、私たちの役割です。そして何より、地方であろうと都会であろうと、ひきこもりに対する偏見をなくしていくための情報発信が、私たちの大切な使命です。

解決の鍵は「家族」。信じて待つことが、次の一歩につながる

Zキャリアガイド編集部────支援者が当事者ご本人に直接会う機会が少ないからこそ、「家族」の役割が非常に重要になるのですね。ご家族が変わることで、当事者の方にはどのような変化が生まれるのでしょうか。

当事者に最も近い存在である「家族」の変化が第一歩

これは最も重要なポイントです。私たち支援者は、実は当事者ご本人に直接会える機会はほとんどありません。ご本人は、社会から避難し、家庭の中に安心・安全を求めている状態だからです。ご本人に一番近い存在は、ご家族、特に母親です。しかし、将来を心配するあまり、親御さんの不安がプレッシャーとなってご本人に伝わり、家庭の雰囲気を暗くしてしまうケースが少なくありません。だからこそ、まず親御さんが変わることが大切なのです。

「ここにいていい」という安心感が、回復のエネルギーになる

家族会は、親御さんたちが「悩んでいるのは自分だけじゃない」と知り、お互いの悩みを共有し、親として成長していくための場です。私たちが親御さんにお伝えするのは、「まずはお子さんを信じて、安心してひきこもれる環境を作ってあげてください」ということです。「出て行け」ではなく、「ここにいていいんだよ」という安心感を伝えることで、お子さんは初めてエネルギーを蓄え、次のステップを考えることができるようになります。「信じて待つこと」。それが回復の本当のスタート地点なのです。

「支援」を身構えて行うのではなく、ありのままを受け入れる

Zキャリアガイド編集部────実際に相談に来られたご家族や、居場所に参加される当事者の方と関わる上で、特に意識している心構えや工夫があれば教えてください。

自然で何気ない交流を目指している

ご相談は、ご家族から直接ご連絡いただくこともあれば、行政や民生委員さんからの紹介で繋がることもあります。いずれの場合も、まずは「家族会に来て、他の方のお話を聞いてみませんか?」とお誘いすることが多いですね。当事者の方が参加される「居場所(オープンスペース)」の活動で大切にしているのは、「支援っぽくしない」ということです。スタッフが「支援するぞ」と身構えるのではなく、ただ同じ空間でゲームをしたり、おしゃべりをしたり、本を読んだり…。それぞれが気楽に過ごせる雰囲気づくりを心がけています。「いかにも」な支援の場ではなく、同じような経験を持つ仲間と顔を合わせ、何気ない交流ができる。そのこと自体が、ご自身の世界を少し広げるきっかけになるのです。

複合的な課題には、地域のネットワークで対応する

Zキャリアガイド編集部────ひきこもりの背景には、精神疾患や貧困など、様々な問題が複雑に絡み合っているケースも多いかと思います。そういった複合的な課題には、どのように対応されているのでしょうか。

多様な悩みに対応する「ひきこもり支援協議会」の強み

人の悩みは本当に多種多様で、様々な要因が複雑に絡み合っています。精神疾患のように医療的なアプローチが必要な場合もあれば、発達障がいにおけるグレーゾーンのように明確な診断がつかない場合もあります。私たちは、相手に対して「この人は〇〇だ」と決めつけることをせず、一人の人間として向き合い、少しずつ悩みを聞き出していくことを基本にしています。その上で強みとなるのが、先ほどお話しした「ひきこもり支援協議会」というネットワークです。この地域には、教育、医療、福祉など、様々な分野に強い専門機関や支援者がいます。協議会の場で「こういうケースがあるのだけれど、対応できそうな方はいますか?」と情報を共有し、最適な支援に繋げることができる。この連携体制は、私たちの活動の大きな力になっています。

「誰にも相談できない」と感じている方へ伝えたいメッセージ

Zキャリアガイド編集部────最後に、今まさにひきこもりに関して悩みを感じているご家族や、社会に出ることを恐れている当事者の方へ、一番伝えたいメッセージをお願いします。

まずは親から子へ信頼や安心感を与えて欲しい

正直なところ、すべての方に通用するような万能なメッセージは存在しないのではないか、という思いはあります。特に、ネットすら拒絶しているご本人に言葉を届けるのは非常に難しいです。だから、まずは親御さんにお伝えしたいです。先ほども触れましたが、お子さんに伝えるべきメッセージは「信頼しているよ。安心してここにいていいんだよ」という、まず第一の安心感です。

現代社会のあり方にも変化が必要

そもそも、「ひきこもり」は本人の問題だけでなく、むしろ社会のあり方に問題があるのではないか、という視点が近年重要視されるようになりました。成功か失敗かといった二元論で人を判断し、経済的な豊かさばかりを優先する社会の風潮が、人々を追い詰め、心を閉ざさせている側面もあるのではないでしょうか。問題の本質は、社会全体で考えていくべきところにあります。

今後のビジョン

Zキャリアガイド編集部────「地域づくり」というお話もありましたが、「あわの風」として今後描いているビジョンについて、改めてお聞かせください。

地域になくてはならない「福祉資源」へ

少し大げさかもしれませんが、これからも「地域づくり」を続けていきたいです。このNPO法人が、地域になくてはならない福祉資源の一つとして、社会に貢献できる存在でありたいです。この建物を、ひきこもり支援の場としてだけでなく、様々な人が集うボランティア拠点や交流の場所として活用していきたい。そして、私たち自身も支援者としての力を高め続け、一人でも多くの方に寄り添っていきます。

施設情報

  • 名称:NPO法人 あわの風(KHJ全国ひきこもり家族会連合会 南房総支部)
  • 所在地:千葉県館山市北条1170-3
  • 連絡先:090-2335-1338
  • 公式HP:https://awanokaze.org/
  • 主な対象者:
    • ひきこもり等の生きづらさを抱える当事者およびそのご家族
    • 孤独・孤立を感じ、社会とのつながりを求めている方
    • 安房地域(館山市、南房総市、鴨川市、鋸南町)近隣にお住まいの方
  • 主な活動内容:
    • ひきこもり相談
    • 子ども食堂運営
    • 地域のオープンスペース運営
    • おおぞら文庫運営
    • 福祉避難所運営
Zキャリア編集部
Zキャリア編集部
Zキャリア編集部は、初めて就職・転職する方々へ、就職活動に役立つ情報を発信しています。具体的な職種や業界に特化した情報提供を心がけ、将来のキャリアを考える上で参考になるような内容をお届けしています。

カテゴリから記事を探す

仕事にまつわる事例集 (16)