保育士は、社会のインフラをささえる大切な仕事です。一方で、保育士をしていて、有給休暇が取りにくいという声もあります。保育園で働くと「休みが取れないのは仕方がない」と思うかもしれませんが、休みをもらう権利はどの仕事にもあります。本記事で労働基準法における定義や有給休暇を取るために自分ができることを知り、今の職場が自分にとって適切な環境かを考えてみましょう。
この記事で分かること
- 保育士はなぜ休みがないと言われるの?
- 保育士が休みをもらいたいのはどんな時?
- 労働基準法における休みの定義
- 有給休暇をとりやすくするには
- 働きつ続けるのを考え直すべき職場とは
保育士には休みがないと言われる理由
保育士の仕事は忙しいので、心身ともにしっかりと休息をとる必要があります。しかし、保育士として働きはじめてみると、休みが取れないと感じる場合があるでしょう。その理由を見ていきましょう。
- 休みの日に出勤があるため
- 平日に有給休暇をとりにくい
- 体調不良でも休みづらいことがある
休みの日に出勤があるため
保育士は、週末や祝日に出勤する場合がたびたびあります。保育園は通常、土曜日も営業しているため、交代で土曜出勤があるかもしれません。しかし、園によっては人手不足により、休日出勤が多くなることも否定できません。また、園の行事や研修、会議など保育活動がある日に行えないイベントが、週末や祝日に組まれるときもあり、ワークライフバランスを保つのが難しくなる場合もあります。
平日に有給休暇をとりにくい
労働人口が減少し、人手不足が深刻化する中で、余裕をもって職員を雇える園は少ないです。おのずと、好きなタイミングで有給休暇をとることが難しくなります。子どもとの時間は予測不能なトラブルが多く、人手が少なくなると対応が行き届かなくなるかもしれません。
また、毎日の業務が多く、有給休暇をとると仕事が溜まるのを懸念して、有給休暇取得を控える保育士もいるでしょう。
体調不良でも休みづらいことがある
人手不足が深刻な職場では、多少の体調不良では休みづらいということがあります。咳が続いたり、おなかの調子が悪かったりなど、明確な診断名のない症状のときに休むのをためらう人がいるかもしれません。
また、職場の雰囲気だけでなく、「自分が休むと同僚に迷惑がかかる」「担任がいなくなると子どもたちを不安にさせてしまう」と考え、休みを取れない場合もあるでしょう。体調が整わない状態でハードな仕事である保育士の業務をこなすのは、とてもつらさを感じます。体調を崩せないというプレッシャーもストレスになり得るでしょう。
保育士が休みを取りたい理由
保育士が休みを取りたい理由はさまざまです。どんな理由で休みをもらいたいか見ていきましょう。
- 体調不良
- 自分の時間をとるため
- 自分の家族の看病やサポート
体調不良
子どもは免疫機能が未熟であるため体調を崩しやすく、また自分自身で感染を防ぐ対応ができないため、ともに過ごす時間の長い保育士は常に感染症リスクにさらされています。保育士自身が体調不良を感じた時は、保育園の子供達のためにも、自分自身のためにも仕事を休みたいと考えるかもしれません。
自分の時間をとるため
仕事が大変な保育士には、有給休暇を使って心身共に休める時間が必要です。日々の業務で疲れた身体を休める時間をとったり、リラックスのために趣味の時間をとったりするのは、長く仕事を続けるために大切です。自分の時間をしっかりと確保し、心身共に回復すると仕事へのモチベーションにもつながります。
自分の家族の看病やサポート
家族の病気や生活のサポートで休みを取る場合もあります。子どもがいる保育士さんは、子どもの突然の体調不良やイベントで休みが必要になる場合も多いです。また、子どもだけでなく、親の介護や通院でもサポートが必要な場合があります。
家族の看病やイベントは避けられない理由の1つです。有給休暇を取れず、家族をサポートができない状態は仕事を続けるべきか悩むポイントになるでしょう。
労働基準法における休みの定義
休みが取りにくい保育士ではありますが、労働基準法では、どんな仕事でも休みを取る権利があることを法律で定めています。詳しく見てみましょう。
- 休暇日数
- 有給取得の義務
- 休暇制度
休暇日数
労働基準法では、週1回以上の休日または4週間で4日以上の休日を当てることを義務付けています。そのため、土曜保育のある保育園の場合、週末や土日の連休がない場合もあり、年間休日は他の仕事に比べて少ない可能性があります。園によって、土曜出勤のルールが異なるので、事前にしっかりと確認するのが大切です。
参照:「労働時間・休日/厚生労働省」
有給取得の義務
年次有給休暇の付与と取得は、労働者の権利として労働基準法で定められています。入社6ヶ月後に最低10日間の有給休暇が付与され、その後は勤務年数に応じて最大20日まで増加します。
さらに、2019年4月からは、年10日以上の有給休暇が付与される全ての労働者に対し、企業が年5日の有給休暇を取得させることが義務化されました。 この義務は、保育士の方々を含め、条件を満たす全ての労働者が対象です。
したがって、有給休暇を使えない、または使わせないような環境は、法律違反となる可能性があり、良い労働環境とは言えません。事前に有給休暇の取得率や、この年5日の取得義務が確実に守られているかを確認することで、その園の休みに対する方針や法令遵守の意識が見えてくるでしょう。
参照:「労働時間・休日/厚生労働省」
休暇制度
夏季休暇や年末年始休暇などの長期休暇は、労働基準法における定めはないため、園による就業規則を確認する必要があります。
保育園は長期休みがないため、長期休暇の有無は園の方針に左右されます。長期休暇を取得したい場合、就業規則を事前に確認することが大切です。
有給を取りやすくするには?
有給を取るのが一般の仕事に比べて難しい保育士ではありますが、取りやすくする方法はあります。どのような点に気をつけるべきか見ていきましょう。
- タイミングに気を付ける
- 人手が足りている園に勤める
- 業務の引継ぎを徹底する
タイミングに気を付ける
有給休暇を取得する場合、繁忙期を避けるなどの配慮が必要になります。保育士は通常業務でも人手を必要とする環境ですが、新年度始めやイベント前は特に忙しくなります。
体調不良や緊急性のある場合を除き、繁忙期を避けて有給休暇を取得するようにしましょう。タイミングに気をつけるのは、同僚への気遣いとしてはもちろん、忙しく業務量が多い時期に、自分の業務を貯め込まないで休みを取ることができます。
人手が足りている園に勤める
人手が足りている園に勤めると、比較的休みを取りやすい傾向があります。保育士が休みを取りにくい理由の一つに、人手不足があります。職員の人数に余裕がある園では、シフト調整がしやすく、また急な休みでも代わりの保育士がいるため、他の職員に負担がかかりにくくなります。
自分が休んでも、代わりにサポートしてくれる保育士がいれば、休む側も安心して休暇を取れるでしょう。
業務の引き継ぎを徹底する
有給休暇取得は労働者の権利ですが、休むには周りの協力が必要であるため、配慮として職場や同僚にしっかりと業務の引き継ぎをすることが大切です。
引き継ぎを行うと、自分が休んでも代わりの保育士が円滑に業務を進められます。代わりの保育士が負担少なく働けるよう準備して休むことで、同僚も休みに対してネガティブな感情が湧きにくくなるでしょう。
有給休暇の取りやすさは、園全体の雰囲気も大きく影響しますが、自分自身で休みを取りやすくする環境づくりも大切なポイントになります。
退職を考えた方がいい職場とは?
全ての保育園が労働環境を整えていれば問題はないのですが、劣悪な労働環境が一定数あることは否定できません。退職を考えた方がいい職場を見ていきましょう。
- 有給休暇を勝手に使われる
- 体調不良でも休ませてもらえない
- 休暇日数が極端に少ない
有給休暇を勝手に使われる
有給休暇は、本人の同意なく勝手に消化されることは違法になります。たとえば、出勤停止の病気休暇が有給休暇にされていたり、行事の振替休日に有給が使われたりしているケースもある場合があります。勤務規定や給与明細を確認し、自分が申請していない有給休暇が使われていないか確認しましょう。不正な有給処理の対策として、園に異議を申し立てたり、労働基準監督署などに相談したりする方法があります。しかし、そのような違法行為が見受けられる園に居続けるのは、自分がつらくなってしまうので、環境の整った園に転職をするのも1つの選択肢です。
体調不良でも休ませてもらえない
人手不足を理由に、体調不良でも休ませてもらえない園も存在します。
体調不良で出勤するのは、保育士自身がとてもつらいのはもちろん、免疫機能が未熟な子どもと接するため、子どもへの感染リスクを高めてしまいます。衛生環境を整えるのも保育園の義務であるにも関わらず、体調不良の保育士を出勤させるのは、保育の質の低下につながる重要な問題です。
どんな人でも、体調を崩す可能性はあります。体調を崩したときにお互いがサポートしあえる労働環境で働くことが好ましいでしょう。
休暇日数が極端に少ない
保育園は土曜日も開園しているところが多いため、人手が少ないと土曜出勤が増え、年間休日が少なくなるかもしれません。もちろん出勤すれば給料が発生するため、お金を稼ぎたい場合は問題はありませんが、仕事が大変な保育士は身体をしっかりと休めたい場合が多いでしょう。労働基準法では、法定休日と法定労働時間によって労働者が守られています。労働基準法における法定休日と法定労働時間を考慮すると、年間で105日が最低ラインになります。日本の平均年間休日は115.3日となっており、自分の年間休日が少ないのか分からない場合、平均値を参考に判断できるでしょう。
年間休日が平均以下かどうかだけで判断するのではなく、自分が今の労働環境で意欲的に働くことができるかも考えましょう。難しいと感じた場合は転職に踏み切るタイミングになります。
参考:「令和4年就労条件総合調査/厚生労働省」
保育士が転職する方法は?
休みが取れない環境に疲れ、転職を意識する保育士も一定数いるでしょう。保育士から転職を考えた際、どのような方法で進めていけばいいのか見ていきましょう。
- 退職理由を整理する
- 退職の意思を伝える
- 転職活動を始める
退職理由を整理する
退職を考えたとき、理由を冷静に整理することはとても大切です。理由を明確にすることで、今後の進路を考えやすくなるだけでなく、退職の意思を伝える際に適切な伝え方ができたり、転職活動で自己PRにつなげたりするのにも役立ちます。
つらい状況から、すぐに抜け出したい思いはあると思いますが、一度冷静になって自分の気持ちを整理しましょう。
退職の意思を伝える
退職理由がしっかりと整理できたら、退職の意思を園長や上司に伝えます。円満退職のためには退職理由の伝え方とタイミングが重要です。休暇が取りにくい環境が理由でやめる場合でも、ストレートに伝えるのではなく「体調を崩しやすくなり、業務の継続が難しい」「家族のサポートが必要になった」など批判を避けた伝え方をおすすめします。
また、タイミングに関しても、保育園の繁忙期である新年度始まりやイベント前を避けて伝えるのがベストでしょう。
転職活動を始める
無職期間を避けるために、仕事をしながら転職活動を行うのが望ましいです。
休みの取りにくい職場で働いている場合、働きながらハローワークなどの支援機関に通うことは難しくなります。しかし、転職活動では情報収集や対策がとても大切であり、自分だけで行うと、情報収集に時間がかかったり、対策不足で転職が思うように進まなくなったりする場合があります。
下記のグラフが示すとおり、忙しい日常の中で、転職の際に対策を行えている人は多くありません。

対策をしている人が少ない中で、しっかりと準備をして活動すると就職を有利に進めていけるでしょう。
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